紫蘇は中国原産の一年草です。アントシアン色素の有無により赤紫蘇系と青紫蘇系に分けることができます。
赤紫蘇は梅干などの着色によく使われます。これは葉に含まれるアントシアン色素が梅のクエン酸によって酸化され赤紅色に変化することを利用したものです。
一方青紫蘇は大葉とも呼ばれ、“刺身のつま”などによく利用されています。またβーカロテンは緑黄野菜の中で最も多く含まれています。
紫蘇は強力な防腐作用のある精油成分を含み、発散作用・理気作用・解毒作用に優れるので、胃腸型の感冒、精神・神経症状の改善、食中毒や蕁麻疹の解消に用いられています。
漢方薬の生薬には赤紫蘇が用いられ、紫蘇の葉を蘇葉(ソヨウ)、実を紫蘇子(シソシ)と呼びます。
蘇葉は半夏厚朴湯や参蘇飲などの処方に、紫蘇子は蘇子降気湯に使われています。
材料
赤紫蘇の葉 80g
砂糖 80g
クエン酸 20g
水 1リットル
作り方
1. 赤紫蘇の葉をよく洗います。
(赤紫蘇の葉が手に入らないときは乾燥葉10gでも結構です。)
2. 鍋に水を入れて沸騰させ、赤紫蘇の葉を入れ弱火で10分煮ます。
3. 赤紫蘇の葉を取り出し、砂糖とクエン酸を加え溶かします。
冷え症といえば、寒い季節にだけ起こる症状ではありません、夏でも冷え症は存在します。
飲食物の保管場所として冷蔵庫に入れる人が多いですよね。冷蔵室は3~6℃です。
ところで通常胃の温度は36~37℃と言われています。そこへ冷蔵庫で冷えた飲み物が入ってきたらどうでしょう。胃袋が氷嚢(ひょうのう)代わりとなってお腹を冷やします。
当然消化活動が衰え、消化不良・食欲減退・腹痛や下痢といった症状が起こります。またお腹の冷えが原因で偏頭痛を起こすこともあります。
中国人は夏でも冷たい飲み物は口にしないそうです。消化器官を冷やすことがどれだけ体に悪影響を及ぼすかを知っているからです。
冷蔵庫の飲食物はそのまま口にせず、レンジなどで温めるなど常温に近い温度で摂ることをぜひ心がけて下さい。
夏場に増えるかぜの特徴として、胃腸など消化器系に症状が現れることが多いものです。
クーラーのかかる寒い部屋に長時間いたり、冷たい飲食物で胃腸を冷やすと、食欲不振・下痢などの症状が起こります。
そんな胃腸型のかぜには藿香正気散(かっこうしょうきさん)がおすすめです。蘇葉など芳香成分のある生薬を含み飲みやすいのが特徴です。
ところで夏場のかぜに葛根湯などを服用すると発汗が高まりすぎて、良くなるどころか病状をかえって悪化させてしまいますのでご注意下さい。
前回の「漢方あんばい通信」の発行が2015年3月でしたので、今回は1年4ヶ月ぶりとなります。その間いろいろなできごとがありました。
特に昨年9月、三重県津市で皇漢堂薬局を経営されていた吉井孝先生が他界されたことは、私にとってたいへんショッキングなことで、心の支えを失った思いがしました。
先生の優しく真摯なまなざしは今でも忘れることができません。
先生のご遺志を継ぎ、これからも私たちは漢方家として日々研鑚に勤めて参ります。
枸杞(クコ)はナス科の落葉低木で、秋には赤い光沢のある甘い実をつけます。成熟した実を採取し、乾燥させて作られたものが枸杞子(クコシ)です。
枸杞子は古くから不老長寿の妙薬とされ、中国最古の薬物書「神農本草経」には、「久しく服すると筋骨をしっかりさせ、身を軽くして老いない」と記されています。今昔物語に登場する久米仙人は、枸杞子を常食して186歳まで生きたといわれています。
枸杞子は食材として中国料理にしばしば使われており、日本でもホワイトリカーにつけた枸杞酒は、強壮作用のある薬酒として昔から親しまれています。
枸杞子には、肝臓の代謝機能を高めるベタイン・血管を強化するルチン・目の活性化を助けるゼアキサンチンなどの成分が含まれています。
肝腎の働きを補うことから、眼精疲労、膝腰の倦怠感、性機能障害、病後や老化による身体衰弱の治療に役立てられています。
なお枸杞は根皮(地骨皮)や葉も生薬として利用されています。
材料 2人分
春キャベツ 1/4玉
ニンジン 1/2本
枸杞子 50粒ほど
レモン 1/2個
酢 小匙1
砂糖 小匙1
塩 小匙1
オリーブオイル 小匙1
コショウ 適量
作り方
1. レモンの絞り汁・酢・砂糖を混ぜた液に、枸杞子を1時間ほど漬けておく。
2. キャベツ・ニンジンは千切りにして塩を混ぜ合わせ、しんなりしてきたら水気を絞り切る。
3. 1から枸杞子を除いた調味液にオリーブオイル・コショウを加え、2を混ぜ合わせる。
4. 3を皿に盛り付け、除いておいた枸杞子を添える。
スギの花粉が舞い始め、花粉症の方にはとても憂鬱な季節がやってきました。
みなさんマスクを着用したりお薬を服用したりしていますが、実は血液の流れが悪く、うっ血しやすい方が花粉症になりやすいのです。うっ血が起こると体からの分泌物が増え、その結果として花粉症を誘発するのです。実は体質改善することでも症状を軽減できます。
甘いものを食べすぎると、血液がねばり、うっ血しやすくなります。甘党の方にはたいへんつらいことでしょうが、この季節はできるだけ甘いものを控えるようにしましょう。
また運動不足の方もうっ血が起こりやすいので、血液が体の中をスムーズに循環するように、1日7000歩程度歩きましょう。歩くことで「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎがポンプ機能となって、足腰に滞りがちな血液の流れを改善し、上半身の血流も良くなります。ぜひためしてみて下さい。
女性で手足の冷え・めまい・月経不順などに悩んでいる方がよく見受けられます。これは血液不足や血行不良によることが多く、男性とは生理機能が異なるため血に関係する症状が出やすいのです。
そんな方には当帰芍薬散がおすすめです。当帰芍薬散は、血行を良くする生薬と体内の水液を運ぶ生薬が組み合わされた処方です。
妊娠中の薬は慎重に選ばなければなりませんが、当帰芍薬散は作用が比較的おだやなので、妊婦の方にもよく服用されています。
また血流の改善に効果があるので、男女を問わず花粉症の治療にも使われています。
「漢方あんばい通信」は今回で4回目の発行となりますが、毎回四季の初めに発行しております。季節の変わり目は気候の変化が人に与える影響が大きく、体調を崩す方が多く見受けられたのが発行のきっかけでした。
文明の発達によって、私たちは快適な生活環境の中で暮らしていますが、体の構造そのものはほとんど変化していません。ですから自然を支配するのではなく、やはり自然に順応できる体を作ることが大切ではないでしょうか。
これからも皆様の健康維持にお役に立てる情報を発信してまいります。
なつめはクロウメモドキ科の落葉高木で、熟した果実は肉厚で甘みが強く、ねっとりとした食感を持ちます。
茶の湯の道具の「なつめ」は、器の形が「なつめの実」に似ているためと言われています。
中国では桃・李(すもも)・杏(あんず)・栗とともに「五果」と呼ばれ、紀元前より珍重されています。
糖類、ミネラル、食物繊維などを豊富に含み、「一日に三個食べれば歳を取らない 」と言われるほど栄養価の高い果実です。
漢方では、なつめの果実を乾燥した「大棗」(タイソウ)が生薬として用いられます。胃の機能を補い、精神を安定させるので、食欲不振、下痢、精神不安、ヒステリーなどに効果があります。
また生姜(ショウキョウ)や甘草(カンゾウ)といっしょに使われることで、刺激の強い薬性を緩和する働きがあります。
ちなみに、なつめの母種とされるサネブトナツメは、果実が小さくて酸味が強く食用にはなりませんが、その種子は酸棗仁(サンソウニン)と呼ばれる生薬で、不眠の漢方薬に使われています。
材料 2人分
牛肉赤身 200g
大棗 30g
ししとう 10本
しょうが 5g
調味液
・オイスターソース 大匙2
・紹興酒 小匙2
・豆板醤 小匙1/2
作り方
1. 牛肉は細切りにして、調味液に30分ほど漬け込む。
2. 大棗は水で軽くもどし、種を除いて小さくほぐす。
3. ししとうは種を除き、千切りにする。
4. 熱したフライパンにサラダ油を入れ、みじん切りにしたしょうがを加える。
5. 調味液に浸けた牛肉を炒め、大棗・ししとうを加え炒める。
「鬼は外。福は内。」節分の豆まきは、古き良き日本の伝統行事です。
季節の変わり目である「節分」に悪い鬼たちが現れることから、豆で鬼を追い払い、外から災いがやってこないようにという意味があるそうです。昔は「目に見えない何か悪さをするもの」を「鬼のしわざ」であると考えていたのでしょう。
そういえば「ハローウィーン」も、そもそも新年を迎える前に悪霊を追い出す宗教的な意味合いのある行事なので、豆まきは「日本の ハローウィーン」と言えるかもしれませんね。
ところで漢方の世界では、よく「邪」(じゃ)という言葉を使います。
例えば、体に「寒邪」が侵入すると、冷えや悪寒の症状が現れたりします。
また「湿邪」によって、手足にむくみが生じたり、体が重だるく感じたりします。
人間の体に侵入し悪さをするものという意味では、「邪」とは「鬼」そのものなのです。
しかしさすがに豆をまいて、体から邪を払いのけるわけにはいきません。
そこで漢方では、体の生理現象を利用して邪を取り除きます。
体内の熱を下げるために、便秘症状がなくても排便を促す方法をとることがあります。
足のむくみには、利尿作用のある漢方薬を使います。
かぜ薬の葛根湯は発汗させて治療します。汗とともに体表部の邪気を追い出すのです。
外に出すだけの治療ばかりではありません。虚弱体質の方には血流を良くし体力を補う漢方薬を処方します。
「福は内」というわけです。
漢方とは、人間の潜在能力を引き出す治療法なのです。
そもそも「風邪」とは「風のように移動する邪気」のことで、「急激に発病し、変化が速く、容易に病変する」という特徴があります。インフルエンザなどの強い邪は、体表からたった半日で一気に体の奥に侵入します。できるだけ早く薬を服用し、ゆっくりと体を休めましょう。
年の瀬が近づいて参りました。年齢というと、昔は元日を迎えるたびに歳を1つ重ねる「数え年」のことでした。今では誕生日で歳を数える「満年齢」が一般的で、「年をとる」という意味合いもずいぶんと変わってきたようです。
なにわともあれ、豊かに年を重ねたいものです。どうか良い年をお迎え下さい。
山査子(サンザシ)は中国原産のバラ科の植物で、秋に500円玉ほどの大きさのりんごのような実をつけます。
果実にはビタミンCをはじめ、タンニン・サポニン・クラテゴール酸などが含まれています。消化促進作用があり、特に肉類などの油っぽい料理に効果があります。また血中脂質を抑制し、血圧を下げる働きがあります。
漢方では消化不良・食欲不振・下痢などの治療に用いられ、化食養脾湯という漢方薬に処方されています。
生の果実は酸味があるため、果実をつぶして砂糖や寒天を混ぜ、棒状に整形したドライフルーツがよく売られています。料理などに使うときは、漢方薬店などで山査肉(サンザニク:サンザシの乾燥果実)を求めると良いでしょう。
最近ではサンザシの効能がマクロビオティックや薬膳料理で注目され、人気の食材になりつつあるようです。
なお胃酸過多や胃潰瘍の方は、症状を悪化させる恐れがありますのでご注意下さい。
効能
梨 生津潤肺・清熱化痰
サンザシ 消食健胃・活血化
材料 2人分
梨 2個
山査肉 15g
砂糖 50g
水 360ml
作り方
1. 山査肉は水に15分ほど浸けておく。
2. 梨は皮と種を取り除き4等分に切る。
3. 鍋にすべての材料を入れ、中火で15分ほど煮る。
4. 梨が柔らかくなったら、荒熱をとり冷蔵庫で冷やす。
5. お好みでミントの葉を添える。
「病気には、本当の病気と本来は病気ではないが都合が悪いことから逃げるために病気になる場合と、発生する要因はいろいろある。」と言われています。
もちろんウィルスや細菌により起こる病気もありますが、ストレスや気持ちの切り替えができなくて病気になることが結構多いのです。
こういうときにも、頭痛、胃痛、食欲不振、不眠、発熱、目まい、耳鳴り、発疹が起こります。
実はこんな方には漢方が適しています。漢方では病気を起こす原因となるものが何であるかを把握した上で、体全体のバランスを整えるように治療します。たとえ症状は同じでも、原因が違えば治療薬も異なります。
もし貴方がお店にご相談に来られたときは、現在の症状とともに、お仕事や家庭のお悩みなどをありのままに教えて下さい。より正確な診断ができ、最適なお薬をおすすめできると思います。
これからの季節気候が良くなると、山登りやゴルフなどに出かけたくなりますね。
でも日頃運動不足の方はご注意を。普段使っていない筋肉を急に使うと、筋肉のけいれんやこむら返りを起こしやすくなります。
そんなときのために常備しておきたいのが、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。芍薬と甘草の2種類の生薬で構成されている漢方薬で、体格など実証・虚証に関係なく使うことができます。また急な腹痛・腰痛にも効果があります。
なお芍薬甘草湯を多用・連用すると、甘草の副作用として血圧が高くなったりむくみが出たりする場合がありますので、症状が出たときに適量を服用するようにして下さい。
秋は収穫期を迎える農作物が多く、美味しい食べ物が出回る季節です。
今回ご紹介した「梨とサンザシのコンポート」は、材料さえあれば手軽に作れる消化に良い薬膳料理です。美食のあとのデザートとして楽しんで下さい。
はとむぎは東南アジアを原産地とするイネ科植物の成熟種子で、鳩が食べることからその名前がつけられたようです。生薬名のヨクイニンは、特にはとむぎの殻を取り除いたものを指します。
ミネラルや栄養素がたいへん豊富な穀物で、中国最古の薬学書とされる『神農本草経』には、上品(無毒で長期服用が可能なもの)として収載されています。
腫瘍抑制作用のあるコイクセノライドという成分を含み、漢方でも関節痛・神経痛の治療に使われています。
また昔から『イボ取りの妙薬』としてよく知られ、最近では肌を滑らかにする美肌効果も注目を集めています。
さらに体の水分を調整してくれる働きがあるので、じめじめとした季節や体が重だるいとき、むくんだり尿が出にくいのときにおすすめです。
薬用には煎じて飲むのが一般的ですが、おかゆにしたりお米と一緒に炊くと美味しくいただくことができます。
ただし精白したはとむぎは硬いので、前もって一晩水につけておくのがポイントです。
材料 4人分
はとむぎ 20g
うるち米 80g
山芋(長芋でもよい) 200g
水 1000ml
サラダ油 小さじ1/2
作り方
1. はとむぎは一晩(6時間以上)、米は30分以上水につけておく。
2. 山芋は洗って皮つきのまま1㎝角に切る。
3. 水1ℓを土鍋に入れ、沸騰したらはとむぎ・米・山芋を加える。
4. 再び沸騰したら弱火にし、底からひと混ぜして、サラダ油小さじ1/2を加える。
5. ふたをして静かに約1時間炊き上げ、火を止めて5分間蒸らす。
朝食をとり胃の動きが活発になると、胃と腸が連動して排便が起こります。ところがなんらかの原因で排便がスムーズに行われず、多くの方が便秘で悩んでおられます。
便秘になると体に熱がこもり、イライラして怒りっぽくなったり、にきびや吹き出ものが出たりします。
原因としては、偏食、食事量の減少など生活習慣によるもの、精神的ストレスによるものなどがあります。また病気や手術の後に腸の収縮力の低下して便秘になることもあります。
便秘の漢方薬としては、大黄甘草湯、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、潤腸湯、麻子仁丸などがあり、すべて大黄という生薬が入っています。大黄の成分センノシドが腸内細菌によって分解され、その生成物質が大腸のぜん動運動を活性化するのです。
ところで便秘症状を訴える妊婦さんは多いのですが、流産などの恐れがありますので便秘薬は慎重に選ばなければなりません。虚弱体質の方も効き目の強い薬は避けるべきです。
おすすめはマイルドな便通をうながしてくれる“どくだみ”(じゅうやく)。乾燥葉を軽く煮出したものは特有の臭みがほとんどありませんし、カフェインも含まないので、毎日お茶がわりに飲むとよいでしょう。
医療費控除とは、1年間に自己負担した医療費が一定額を超える時、確定申告すると税金が一分戻ってくる制度です。
医療機関で支払った診療費や医師の処方による医療用医薬品だけでなく、風邪や便秘など治療または療養のために薬局・薬店で購入した医薬品(OTC医薬品)についても医療費控除の対象になるのです。
生計を一にする親族の医療費は一人まとめて申告することもできますので、金額が少額であってもレシートや領収書は捨てず、大切に保管するようにしましょう。
もうすぐ梅雨の季節です。じめじめと蒸し暑い日がつづき、食べ物が腐敗しやすくなります。
食材は新鮮なうちに調理し、早めに食べるようにしましょう。冷蔵庫で保存していても安心せずに、においや味覚で違和感を感じたら、もったいないと思っても捨てるようにしましょう。食中毒になれば、食材よりも多くのお金を失うことになりかねないのですから。